遠心機・オートクレーブお役立ち情報

遠心機(遠心分離機)とは?

遠心機とは、
試料を高速で回転させることで、遠心力を用いて試料を密度の差で分離させる機器のことをいいます。
本記事では遠心機の原理や使用方法など、下記項目について紹介します。
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大学や企業の研究室に入り、これから遠心機を初めて扱うという方やこれから遠心機の導入を考えている方もぜひ参考にしてみてください。

遠心機について基本知識

前述した通り、遠心機とは遠心力を用いて試料を密度の差で分離させる機器のことをいいます。
では、遠心力とは何なのでしょうか?

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遠心力とは

バケツに水を入れさかさまにすると、バケツの中の水はこぼれてしまいます。
しかし、バケツをもって勢いよく振り回したときはどうでしょうか。

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この時、バケツと水には遠心力という力が働き、中の水をこぼすことなく回すことができます。
このように、回転する物体には遠心力という外向きに働く力が生まれます。

4.PNG 例えば、陸上競技のハンマー投げでは回転しながら投げることで遠心力を発生させ、それを利用し飛距離を伸ばします。 車でカーブに差し掛かったときに外側に向かって引っ張られるような力を感じるのも、遠心力の影響によるものです。 その他にも、野菜の水切り器や洗濯機の脱水工程、また、バターや生クリームの製造工程などでも遠心力を利用しています。

遠心加速度とは

このように私たちの身近な場所でも感じることができる遠心力ですが、この遠心力の大きさを加速度の形で表したものを遠心加速度といい、「G」と表記され、下記のように求められます。

G=1.118×(回転半径)×(1分あたりの回転数)2×10-6

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この遠心加速度は遠心機を用いて実験をする際には必ず必要な数値になります。
もし計算するのが大変という方は、簡単に遠心加速度Gが計算できる
遠心加速度G換算シミュレーターをごぜひ利用ください。

遠心分離とは

ではなぜ遠心力を使うとなぜものを分離させることができるのでしょうか。
たとえば、サラダドレッシングなどで油分と水分が分離した光景を目にしたことはありませんか?
これは、油分が水分よりも軽く、比重差があるため重力によって二層に分かれるからです。

そして、遠心機を用いることで、この重力よりも大きな遠心力を加えることにより、本来分離させるのが難しいようなものや分離させるまでに時間がかかるものを短時間で分離させることができるのです。 6.png

遠心機の種類

遠心機には、工業用のものと実験用のものが存在します。

■ 工業用遠心機

工業用遠心機には主に遠心沈降機と遠心濾過機の二種類に分けることができます。

・遠心沈降機

回転体にフィルター及び液体の通過する孔がない遠心機。懸濁物を外側あるいは内側に移動させ分離します。
主な装置型式には、
円筒型(シャープレス型),分離板型(ドラバル型),デカンター型
があり、用途・産業に合わせて様々な製品が用意されています。

・遠心濾過機

回転体の壁面にろ過材 (布、金属フィルター) が取り付けられており、沈殿物がろ過材によってバスケット内にとどまり分離させます。

■ 実験用遠心機

種類と合わせて各製品について簡単にご紹介します。

・高速冷却タイプ

当社では、最高回転数15,000rpm 程度を高速遠心機といいます。
高速遠心機は、高速回転による摩擦熱で試料の温度が上昇しないように冷却機能を搭載しています。
大容量タイプ:Supremaシリーズ
微量タイプ:Kitmanシリーズ(マイクロチューブ専用),MDXシリーズ

・低速タイプ

回転数が3,000rpm ~5,000rpm程度の遠心機です。
比較的大きな粒子を用いた遠心分離(真空採血管など)や、試料のスピンダウンに適しています。
LT-010M(真空採血管専用),PS-020(マイクロプレート専用),他

・多本架タイプ

スイングローターで複数のチューブやプレートを遠心処理できます。
ローターを付け替えることでアングルローターでの遠心も可能なものが多いです。
AXシリーズ(冷却),NIX-521(恒温),LCXシリーズ(卓上)

・恒温タイプ

恒温機能を搭載した遠心機です。
恒温仕様遠心機は、「造血幹細胞への遺伝子導入」などの用途にも使われています。
NIX-521

・小型タイプ

机の上で簡単に遠心できるコンパクトサイズの遠心機です。
コードレスのものも多く、簡単に持ち運ぶ事ができます。
Multi Spin,OneSpin(1本からOK、ダミーチューブ不要)
Cryo Spin(Cryoチューブ専用),他

ローターの種類について

遠心機にはローターと呼ばれる回転体があります。
ローターによってサンプルの採取方法、容量、回転数が異なり、目的に合わせて選定する必要があります。

連続ローター

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直接ローター内にサンプルを流しながら、上澄みと沈殿物に分離することができるローターです。
大量に遠心処理をする際の時間や手間を減らすことができることから、ワクチン生産や動物用医薬品の研究開発、工業系の生産現場などで利用されています。

アングルローター(固定角ローター)

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穴の開いた固定角にチューブを入れ、高い回転数で遠心処理をすることができます。
・高い回転数でより大きな遠心力をかけることができる
・短時間で分離をおこなうことができるなどの利点があります。

スイングローター

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バケット部がスイングすることで沈殿物をチューブの底に集菌することができます。

  • ・一度に多くの本数を遠心できる
  • ・減速中であっても常に底の方に向かって重力が働くため、遠心停止時にサンプルの舞い上がりを抑えることができる
  • ・一カ所にあつまるため、沈殿物の回収がしやすい
    などの利点があります。

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遠心機を使用している時のローターの最外周部の速度は

・アングルローター(NA-7) 867km/h ジャンボジェット機に匹敵
・スイングローター(TS-7) 290km/h 新幹線に匹敵

とかなり速いスピードで回転しています。
誤った使用方法や安全確認をおこたると、事故の原因となりと大変危険です。
遠心機を使用する上で、下記のことに十分注意しながら実験を行いましょう。

1.遠心を開始する前に下記項目について確認を行う

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  • ・ローターに傷、変形、腐食がないか
  • ・ローター及び遠心室内に異物がないか
  • ・ローターは確実に取り付けられているか

事故や故障の原因になることがあります。

2. 遠心試料のバランスをとり、ローターの回転軸に対して対称の位置にサンプルを取り付ける

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アンバランスの原因となるので、チューブは対角に置き、同量のサンプルがない場合はダミーチューブを使用してバランスをとりましょう。

3.遠心チューブについて、下記について確認を行う

  • ・大きさはあっているか(大きすぎても小さすぎてもNG)
  • ・穴形状と正しいチューブを使用しているか
  • ・キズや変形がないか
  • ・許容回転数を守れているか

チューブの破損や事故の原因になることがあります。

遠心分離機の原理は簡単ですが、取り扱いを間違うと故障や事故の原因となり危険です。
不安な点があれば、取扱説明書での確認や当社へお問い合わせいただき安全にお使いください。

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