遠心機・オートクレーブお役立ち情報
大学や企業の研究室に入り、これからオートクレーブを初めて扱うという方や、
これからオートクレーブの導入を考えている方もぜひ参考にしてみてください。
前述した通りオートクレーブとは、別名『高圧蒸気滅菌器』とも呼ばれ、飽和蒸気によって内部を高温高圧にすることで医療用器具やバイオ系実験器具の滅菌、また微生物の殺滅など、必要に応じて適切な滅菌処理をおこなう機器のことをいいます。
よく大きな圧力なべと例えられますが、どちらも原理は同じで圧力を加えることで容器内を高温にし、それによって調理の時間の短縮や滅菌をおこなっています。
被滅菌物は115℃-135℃という蒸気にさらされて滅菌されます。 第十六改正日本薬局方までは下記のように定められておりましたが、現在の日本薬局方では高圧蒸気法*1 の条件記載はありません。
第十六改正日本薬局方まで
被滅菌物の性質、容器の大きさ及び収納状態などにより異なるが、すべての部分が規定の温度に達してから起算する
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第十七改正日本薬局方以降
条件なし |
高圧蒸気滅菌器を使用する場合
・積載物の積荷形態
・被滅菌物の種類 及び 量
上記条件により指定される温度 及び
保持時間を満たす必要があります。
【ポイント】
単純に表記時間の設定で滅菌すればいいというものではなく、サンプルが温度に達するまでにかかる 遅れ時間(滅菌タイムラグ)*2 を考慮する必要があります。
*1 適当な温度及び圧力の飽和水蒸気中で加熱することによって、微生物を殺滅する方法(第十六改正日本薬局方より抜粋)
*2 遅れ時間(滅菌タイムラグ)とは
では、滅菌とはどういったことなのでしょうか。また、滅菌・殺菌・除菌について、どれも似たような用語ですがどのように違うのでしょうか?
除菌
菌やウイルスを取り除いてその数を減らすこと
洗剤・石けん公正取引協議会には「物理的・化学的または生物学的作用などにより、対象物から増殖可能な細菌の数(生菌数)を、有効数減少させることをいう。
ただし、当該細菌には、カビ・酵母などの真菌類は含まない」と定義されています。
どの程度減らすか、数や種類についてなどの定義はされておらず、あいまいです。
殺菌
菌やウイルスを死滅させること
除菌と同じく殺す菌やウイルスの数については明確な指定はありませんが、菌をなくす確かさは除菌よりも高いです。
当社では主に病原性や有害性を有する細菌・ウイルスなどの微生物を死滅させるという意味で使用しています。
滅菌
物質中の全ての微生物を殺滅又は除去すること
日本薬局方では微生物の生存する確率が 100万分の1以下になることをもって、「滅菌」と定義しています。
つまり、菌をなくす確かさで比較するとこのようになります。
オートクレーブ以外にもいくつか滅菌方法があります。
下記では滅菌の方法と用途について紹介します。
・高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)
最も信頼性の高い滅菌方法で、コストが比較的少なくてすみ、その適用範囲も広く、 ガラス製品、磁製品、金属、液体、ゴム製品、紙製品、繊維性製品、水、培地の滅菌など 様々な用途で使用されています。
・ガス滅菌
低温のためゴムやプラスチックの滅菌に向いています。
ガスを使用するためコストがかかり、毒性が高いため残留ガスに注意が必要です。
・乾熱滅菌
蒸気滅菌と比較すると滅菌に時間がかかり、一般に180℃と高温のため、蒸気滅菌に適さないかつ高温乾燥に耐えられる金属器材などの滅菌に用いられます。
当社製品であるLSX-seriesのオートクレーブを例に出して使用方法について紹介していきます。
1)
オートクレーブの缶体底にあるスノコ(底に敷いてある穴の開いた円盤)が少し浸かる程度に水道水を入れる。
この時に超純水を使用すると電気が流れにくく、低水位のエラーとなる場合があるのでその際はコップ一杯分の水道水を入れてください。
2)
オートクレーブ用のカゴやバケツに滅菌したい機器や試薬をセットし、スノコの上に設置する。
このとき、滅菌物の量や滅菌バッグの使用方法に注意してください。
誤った使い方をすると正しく滅菌が行われない場合があります。
安全に効果的な滅菌をおこなうために、当社では特に下記のことを推奨しています。
3)
被滅菌物がセットできたら圧力計が0MPaになっているのを確認し、水蒸気を排出する回収ボトルの水位が適切かどうか確認した後にドアを閉める。
4)
安全弁や排気ホースに問題がないか確認し、温度・時間をセットして運転を開始する。
一般的に滅菌にかける加熱時間は121℃20分以上ですが、缶体温度に対して被滅菌物のすべての部分の温度が121℃に到達する遅れ時間(滅菌タイムラグ)を考慮して時間を設定してください。
5)
設定時間を過ぎると滅菌工程が終了し、徐々に温度と内圧が下がる。
圧力計が0MPaになり、缶体温度が下がってからドアを開き滅菌物を取り出します。
この時、突沸による破裂等の事故を防ぐため、当社では60℃以下になってからドアを開けることを推奨しています。
6)
滅菌用水が十分さめてから滅菌用水の排水を行う。
缶体腐食の原因になることもあるので、当社では週に一度の清掃を推奨しています。
こまめに清掃とメンテナンスを行い、正しく使用しましょう。
本記事中でも何度か触れましたが、設定時間と実際に滅菌が完了する時間にはタイムラグがあり、当社ではこのタイムラグの事を「滅菌タイムラグ」や「遅れ時間」と表記しています。
この、「滅菌タイムラグ」についてきちんと理解していないと、正しく滅菌をおこなっているつもりでも滅菌不良を起こしている可能性があります。
こちらで詳しく解説しているので参考にしてみてください。
オートクレーブに対応している容器を使用し、容器の蓋を開放(または通気性のある物に変更)した状態でご使用ください。
なぜ密閉された容器を滅菌してはいけないのか、滅菌バッグの正しい使用方法や滅菌テープの思い込みについて、こちらにまとめてありますので参考にしてみてください。